“サウナでオペラ”!? ヴェローナ近郊の温泉スパが仕掛ける異色オペラ上演

五感で味わう「熱」と「情熱」——Aquardens Terme & Spa にて

イタリア北部ヴェローナ近郊の大規模温泉スパ Aquardens Terme & Spa が、ユニークな試みを挑戦中です。
ヴェローナの歌劇財団 Fondazione Arena di Verona と、大型温泉パーク Aquardens Terme & Spa が協力し、
開業から間もない新しいサウナで特別版『カルメン』を上演しました。

The Times より
カルメンを演じる熱波師兼ダンサー


観客は水着またはタオル着用で入場し、熱気と香り、照明、そして音楽が織りなす“体験型オペラ”を楽しみます。

筆者は『大胆で面白いことするな、、、』と正直びっくりしました^^;


目次

新しいかたちのオペラ:熱と音楽が交わるサウナ・シアター

会場となるのは、Aquardens 内の「Sauna del Deserto(砂漠のサウナ)」と呼ばれるシアターサウナ。
定員は約350席で、蒸気・照明・香りの演出が可能な特別仕様です。

会場となるサウナ劇場
@Aquardens

上演されるのは、ビゼーの代表作『カルメン』。
舞台上では、ダンサーたちが音源に合わせて物語を身体表現で描き出し、サウナ特有の“アウフグース(ロウリュによって発生した蒸気を、タオルなどであおぐ動作)”の要素を取り入れながら熱気を舞わせます。

闘牛士エスカミーリョが決闘の準備を整えると、香り高いエッセンスが香炉で燃え上がります。
ドン・ホセが力強く登場し、カルメンは劇的な身振りで**バラの香りのインフュージョン(アウフグース)を放ち、
自由と挑戦の象徴である花を投げます。

その後、扇やタオルを使った舞いが展開され、再びエスカミーリョが登場。
クライマックスではカルメンがサウナを自由で抑えきれない存在として凱旋のように去っていく――
そんな熱気と解放感に満ちた結末です。

演出時間はわずか 12〜15分
高温環境に合わせると時間配分がなかなか難しいですよね。短編構成ながら、圧縮されたドラマが身体に直接届く濃密な時間です。


「Heat opens you up to emotion」——熱が感情を解き放つ

Aquardens のディレクターはこう語ります。

“Heat opens you up to emotion.”(熱が感情を開く)

サウナの温熱環境がもたらす身体的な熱と、カルメンの激情的な熱。
このふたつの要素を融合させることで、観客が“心身の両方で”芸術を味わうことを目的としています。

Aquadenz CEO  Flavio Zuliani

衣装はヴェローナ歌劇場の仕立て職人が手がけ、
振付は財団の芸術スタッフと、“アウフグースマイスター”たち(熱波師)が共同制作。
蒸気が立ち上る中、観客を汗とともに音楽の情熱を体感させようという大胆な試みです。

「オペラ」と聞いて、歌手が熱波の中で歌うのかと思いきや、今回はダンサーがメインのパフォーマンス形式
録音音源を使いながらも、音楽と照明、蒸気と香りが一体となって、観客はしっかりと音楽の世界を楽しめるように構成されています。
そのユニークさが評判を呼び、SNSや現地メディアでも大きな話題となっています。
ウェルネスと芸術を結びつけるこの試みは大胆で面白いなと思いました。


CEOとサウナオペラのプロジェクトチーム

開催スケジュール

『Carmen Sauna Edition』は、2025年秋から定期開催が予定されています。

  • 10月25日(土)19:30
  • 11月8日(土)19:30
  • 12月13日(土)19:30
  • 2026年以降も毎月第2土曜日に開催予定

(情報出典:Sauna Wellness Update


公式サイトより@Aquardens

チケット・鑑賞条件

  • 公式サイトAquardens – Opera in Sauna
  • 鑑賞条件:水着またはタオル着用(サウナ利用者対象)
  • 上演時間:約12〜15分
  • 会場:Sauna del Deserto(ヴェローナ県ペスカンティーナ)

観客はスパ入場料+公演参加料を支払って入場。
通常のオペラ劇場とは異なり、リラックスした服装で気軽に参加できるのも特徴です。


公式インスタグラムより@aquardens

世界の“変わり種オペラ”の中で

近年、湖上や洞窟、廃工場など、オペラの舞台は多様化していますが、サウナ空間での上演は極めて珍しい例です。そして何より印象的なのは、イタリア人ならではの大胆さと遊び心です。
「やってみよう」と発案するディレクター、快く身体を使って表現するダンサーや関係者たち、
そしてそれを“いいね!”と受け止める観客と社会。
そんな環境の中で、発想の源に“オペラ”が自然に浮かぶこと自体に感嘆しました。

オペラがこの国では、特別な芸術ではなく、人生の一部として息づいているんだなと感じました。

クラシック音楽とウェルネス文化の橋渡しとしても注目されています。

公式サイトより@Aquardens

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この記事を書いた人

音楽大学大学院でオペラを専攻後、ドイツ・オーストリアに留学。ヨーロッパ各地のオペラハウスの舞台に立つ中で、音楽界の多様性と奥深さ、そしてそのスピード感に魅了される。
帰国後も音楽活動を続けながら、「日本にもっと世界の音楽情報を届けたい」という思いでThe Aria Timesを立ち上げる。
好きなオペラはR.シュトラウスの『ばらの騎士』、最近気になる歌手はSaioa Hernández。美味しいものを食べることと料理を作ることが大好き。現在は子育てに奮闘中。​​​​​​​​​​​​​​​​

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