オペラ・フィラデルフィア、低価格チケットで観客層拡大

11ドルからの挑戦──オペラ・フィラデルフィアが若い観客を呼び込み黒字

2024年6月にオペラ・フィラデルフィアの総監督兼会長に就任したアンソニー・ロス・コスタンツォ。
国際的に活躍するカウンターテナー歌手としても知られる
© Anthony Roth Costanzo — 公式ウェブサイトより
目次

目次

  1. はじめに
  2. 「11ドルから選べる価格」とは?
  3. 劇場に足を運んだ新しい観客たち
  4. 財政面でもプラスの結果
  5. 今後の課題
  6. まとめ

本文

1. はじめに

「オペラは高くて遠い存在」──そう思う人は少なくありません。
しかしアメリカ・フィラデルフィアで、その常識を覆す取り組みが話題になっています。Opera Philadelphia(オペラ・フィラデルフィア)が始めたのは、11ドルから自分でチケット代を決められる制度。これにより、若い世代の観客が一気に増え、劇場の財政にも好影響をもたらしました。


1865年に竣工したフィラデルフィアのアカデミー・オブ・ミュージック。ミラノのスカラ座をモデルに建てられ、
現在もオペラ・フィラデルフィアの本拠地として親しまれている。
クリエーター: Photo by B. Krist for GPTMC 
著作権: © Bob Krist for GPTMC

2. 「11ドルから選べる価格」とは?

制度の名前は「Pick Your Price(選べる価格)」。
すべての席が最低11ドルから購入でき、支払える人はそれ以上の額を選んで払う仕組みです。

通常の「最安席」だけが安いのではなく、劇場全体の座席に適用されるのがポイント。
「良い席に座ってみたいけれど、値段がネックだった」という人でも、気軽に来られるようになりました。


3. 劇場に足を運んだ新しい観客たち

結果はすぐに表れました。

  • この制度でチケットを買った人の およそ3分の2が、初めてオペラを観た観客
  • 年齢層も大きく変わり、観客の大半が45歳以下という、これまでにない世代構成になりました。

オペラは「年配の観客が中心」というイメージが強い世界。その固定観念を揺さぶる成果となったのです。


4. 財政面でもプラスの結果

「安くしたら赤字になるのでは?」という懸念もありました。
ところが実際には、寄付が急増。劇場が必要としていた資金を大きく上回る700万ドル以上の寄付が集まりました。

さらに、シーズン全3作品は発売からわずか3週間で完売。シーズン終了時には約240万ドルの黒字を計上しました。
「価格を下げても支援や関心が広がれば、結果的に劇場は潤う」ことを示した事例といえます。


劇場外観 
© Opera Philadelphia

5. オペラ界への広がりと今後の課題

Opera Philadelphia の試みは、観客の間口を広げ、未来のファンを育てることにつながりました。

一方で、

  • この熱気が数年後も続くのか?
  • 若い観客がリピーターや支援者になれるのか?

こうした点は今後の試金石として今後も注目していきたいと思います。


6. まとめ

最低11ドルからのチケット制度は、

  • 若い観客を呼び込み
  • 初めてオペラを観る人を増やし
  • 財政を黒字化へ 

オペラは決して特別な人だけのものではなく、誰もが手を伸ばせる文化であることを、この取り組みは示しています。

間口が広がり、多くの人が劇場に足を運び、界隈が活気づくことは本当に素晴らしいことです。

多くの劇場や日本のオペラ団体も新しい客層を増やそうと試行錯誤しているので、実際に結果を残せたオペラ フィラデルフィアは本当にすごいと思います!


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この記事を書いた人

音楽大学大学院でオペラを専攻後、ドイツ・オーストリアに留学。ヨーロッパ各地のオペラハウスの舞台に立つ中で、音楽界の多様性と奥深さ、そしてそのスピード感に魅了される。
帰国後も音楽活動を続けながら、「日本にもっと世界の音楽情報を届けたい」という思いでThe Aria Timesを立ち上げる。
好きなオペラはR.シュトラウスの『ばらの騎士』、最近気になる歌手はSaioa Hernández。美味しいものを食べることと料理を作ることが大好き。現在は子育てに奮闘中。​​​​​​​​​​​​​​​​

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