世界の大舞台で「今」いちばん歌っているのは誰?— Opera World TOP Singers Ranking 2025 発表

出演実績で読む「いま」強い歌手たち—直近52週の主要劇場出演を指標化

2025年9月18日、Opera World が最新の「TOP Singers Ranking 2025」を発表。直近52週(約1年間)の主要歌劇場・音楽祭での出演実績から、「今」最も起用される歌手を読み解きます。

© Peter Evans, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
目次

目次

  1. Opera World とはどのようなサイトか
  2. そもそも Opera World TOP Singers Ranking って何?
  3. Opera World TOP Singers Ranking 2025年最新版
  4. ソプラノ:Elena Stikhina(ロシア)
  5. メゾ・ソプラノ:Christa Mayer(ドイツ)
  6. テノール:Marcel Beekman(オランダ)
  7. バリトン:Amartuvshin Enkhbat(モンゴル)
  8. バス:Soloman Howard(アメリカ)
  9. まとめ
  10. 参照リンク

Opera World とはどのようなサイトか

Opera World(opera-world.net)は、ウクライナを拠点とするオペラやクラシック音楽に関する情報を発信する国際的なウェブサイトです。ニュース記事やフェスティバル・劇場の紹介に加えて、世界各地のオペラ歌手の活動を追跡する「TOP Singers Ranking」を特徴的なコンテンツとして展開しています。

このランキングは編集部の主観による投票ではなく、メトロポリタン歌劇場やスカラ座、ウィーン国立歌劇場など、世界的に認知された主要劇場での出演実績を基準にポイント化し、直近1年間の累積スコアで順位が決まる仕組みです。


そもそも Opera World TOP Singers Ranking って何?

このランキングは「現在活躍しているオペラ歌手の中で、誰が注目され、劇場側からも高い需要を得ているか」を示すものです。今回の結果は、オペラ歌劇場や著名な音楽祭での出演を対象に、2024年9月から2025年9月までのおよそ1年間の公演実績を基に集計され、2025年9月18日に発表されました。

どうやって決めてるの?

  • 声種ごとに分かれている
    ソプラノ、メゾ・ソプラノ、テノール、バリトン&バリトン‐バス、バス の5部門。
  • どこで歌ったかが重要
    世界的に認知された有名劇場・フェスティバル・コンサートホールで歌うとポイントが付与されます。特にメトロポリタン歌劇場、スカラ座、ウィーン国立歌劇場などが基準となります。
  • ポイントの仕組み
    • 有名劇場での公演1回につき 100ポイント
    • 毎週(日曜~土曜)で集計
    • 直近52週間(約1年)の合計スコアで順位を決定
  • その他
    • このランキングは 2023年10月1日に開始
    • 誤りがあれば報告を受け付けている

つまり?

このランキングは、「最近どれだけ多くの大舞台に出演したか」が評価の中心。
声の美しさや批評レビューという主観的要素ではなく、実際の出演数や劇場の格に基づくものなのです。


Opera World TOP Singers Ranking 2025年9月版

最新(2025年9月17日付)のトップ歌手は以下の通りです。

部門トップ歌手国籍
ソプラノElena Stikhinaロシア
メゾ・ソプラノChrista Mayerドイツ
テノールMarcel Beekmanオランダ
バリトンAmartuvshin Enkhbatモンゴル
バスSoloman Howardアメリカ合衆国

今回の結果を見ると、ロシア、ドイツ、オランダ、モンゴル、アメリカと幅広い国籍の歌手が並び、国際的な広がりが示されています。


ソプラノ:Elena Stikhina(ロシア)

2016年にドミンゴ主催の世界的声楽コンクール「Operalia」で聴衆賞を受賞しました。公式の順位こそ上位入賞ではなかったものの、観客から最も支持を集めたことで注目を浴び、国際的なキャリアを開く大きなきっかけとなりました。翌2017年にはマリインスキー劇場で《サロメ》を歌い、大きな成功を収めています。その後はウィーン国立歌劇場、パリ・オペラ座、バイエルン国立歌劇場、さらにはメトロポリタン歌劇場に次々とデビューし、《トスカ》《蝶々夫人》《アイーダ》《運命の力》などドラマティック・ソプラノの代表的役柄をレパートリーへと広げてきました。


© Ksenia Paris Photo

メゾ・ソプラノ:Christa Mayer(ドイツ)

ドイツ語圏を中心に活動し、メゾ・ソプラノとして典型的な役柄を安定して演じてきた実績を誇ります。ドレスデン州立歌劇場(ゼンパーオーパー)の宮廷歌手の称号を持ち、今年の公演ではスカラ座、ゼンパーオーパー、そしてバイロイト音楽祭など、主要歌劇場の舞台に並んでいます。堅実で信頼感のある歌手として長年のキャリアを積んでおり、まさにドイツを代表するメゾ・ソプラノといえるでしょう。


© Klaus Gigga 
公式サイトより

テノール:Marcel Beekman(オランダ)

1969年生まれのオランダ出身テノール。パリ・オペラ座、ベルリン国立歌劇場、オランダ国立歌劇場などで活躍を続けています。彼は「キャラクター・テノール」として知られ、強い個性を求められる役柄を得意とし、《フィガロの結婚》のドン・クルツィオなどで存在感を発揮。豊かな演技力と幅広いレパートリーで、William Christie や Simon Rattle といった著名な指揮者との共演も多く、多面的な芸術性を評価されています。


© 2016/24 BLAEUBEECK
公式サイトより

バリトン:Amartuvshin Enkhbat(モンゴル)

1986年生まれのモンゴル出身バリトン。モンゴル国立大学で声楽を学び、2008年からモンゴル国立オペラ劇場のソリストとして活動を開始しました。30歳前後という若さで「Honored Artist of Mongolia(モンゴル名誉芸術家)」の称号を得ており、2012年の Operalia 優勝や BBC Cardiff Singer of the World 観客賞など国際的な舞台でも輝かしい実績を残しています。2025年にはサンフランシスコ・オペラで《リゴレット》の主役を務めるほか、ヨーロッパ各地の主要劇場で《ナブッコ》《椿姫》などの大作に出演予定で、その存在感はますます国際的に強まっています。


© Laura Scaccabarozzi

バス:Soloman Howard(アメリカ)

ワシントンD.C. 出身のバス歌手。Morgan State University と Manhattan School of Music で学び、ワシントン国立オペラの Young Artist プログラムを経てプロキャリアを歩み始めました。メトロポリタン歌劇場、シカゴ・リリック・オペラ、ロイヤル・オペラ・ハウスなど世界有数の劇場に登場する人気歌手です。2024–25シーズンには《ワルキューレ》のフンディング、《ラ・ボエーム》のコッリーネを演じたほか、Met ではスパラフチーレ(リゴレット)、シカゴではザラストロ(魔笛)といった重厚な役柄も担当。力強く響く声と舞台での存在感が高く評価されています。

Photo Credit: Jon Adjahoe

まとめ

いかがでしたか?Opera World のランキングは、SNSの人気や批評家の好みではなく「主要歌劇場での出演実績」を重視しているのが特徴です。まだ始まって間もないランキングですが、すでに一部のオペラファンの間では話題になっており、今後ますます注目を集める可能性があります。世界の大舞台で活躍する歌手たちを知るきっかけとして、今後もチェックしていきたいですね。


参照リンク

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この記事を書いた人

音楽大学大学院でオペラを専攻後、ドイツ・オーストリアに留学。ヨーロッパ各地のオペラハウスの舞台に立つ中で、音楽界の多様性と奥深さ、そしてそのスピード感に魅了される。
帰国後も音楽活動を続けながら、「日本にもっと世界の音楽情報を届けたい」という思いでThe Aria Timesを立ち上げる。
好きなオペラはR.シュトラウスの『ばらの騎士』、最近気になる歌手はSaioa Hernández。美味しいものを食べることと料理を作ることが大好き。現在は子育てに奮闘中。​​​​​​​​​​​​​​​​

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