ソプラノ・バーバラ・ハンニガンがPolar Music Prize 2025を受賞

Queenと並ぶ快挙、“音楽のノーベル賞”に輝いたソプラノ兼指揮者


目次

目次

  1. はじめに
  2. バーバラ・ハンニガンとは
  3. 二重の才能:歌いながら指揮する革新
  4. 教育と育成への情熱
  5. Polar Music Prizeとは
  6. 2025年の受賞式と顔ぶれ
  7. 主催者からの評価
  8. ハンニガンの受賞が持つ意味
  9. まとめ
  10. 参照リンク

はじめに

2025年5月、カナダ出身のソプラノ歌手・指揮者**バーバラ・ハンニガン(Barbara Hannigan)**が、世界的に権威のある音楽賞「Polar Music Prize(ポーラー音楽賞)」を受賞しました。

同時に受賞したのは、あの世界的ロックバンドQueenと、ジャズ界の巨匠ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)
クラシック界からの選出となったハンニガンがいかに国際的に評価されている存在であるかは、この並びからも明らかです。

彼女は、歌手としての繊細な表現力指揮者としての鋭い統率力を併せ持つ、極めてユニークな音楽家として評価を得ました。


バーバラ・ハンニガンとは

カナダが誇る、唯一無二の音楽家

1971年、カナダ・ノヴァスコシア州に生まれたバーバラ・ハンニガンは、ソプラノ歌手として世界中の主要歌劇場で活躍する一方、指揮者としても確固たる評価を受けてきました。

特に現代音楽の分野においては、既成概念を打ち破る表現スタイルで国際的な注目を集めています。
リゲティ《ル・グラン・マカーブル》やジョルジュ・アペルギス《Récitations》など、極めて実験的な作品にも積極的に取り組んでおり、テクニックと表現力の両面において圧倒的な評価を得てきました。

また演奏家としてだけでなく、舞台全体を総合芸術としてとらえる姿勢でも際立っています。
たとえば、自身が主演・指揮を務めた《レット・ミー・テル・ユー》(ハンス・アブラハムセン作曲)では、照明・映像・動作すべてを統合した演出を通じて、音楽そのものを視覚的・身体的に再構築。
その革新的なアプローチは、単なる演奏者を超えた“舞台芸術の創造者”としての存在感を示しています。

こうした活動によって、ハンニガンは音楽シーンにおいてジャンルを越えた影響力を持つ、極めて稀有なアーティストとして位置付けられるようになりました。
特に現代音楽の分野においては、既成概念を打ち破る表現スタイルで国際的な注目を集めていました。


二重の才能:歌いながら指揮する革新

演奏と統率を同時に行う“ハンニガン・スタイル”

彼女の代名詞とも言えるのが、「歌いながら指揮をする」という革新的なスタイルです。
たとえばリゲティ作曲《Mysteries of the Macabre》では、強烈なキャラクターを演じながらオーケストラを指揮するという、他に例を見ないパフォーマンスを披露。

しかし歌手と指揮の「二重役」に関しては、極力奇抜な見せ方はせず、音楽と肉体表現の融合を追求することが彼女の哲学です。


教育と育成への情熱

“Equilibrium”プロジェクトを通じて若手を支援

ハンニガンは、教育者としての側面も持ち合わせています。
彼女が立ち上げた「Equilibrium Young Artists」や「Momentum: our Future Now」といったプロジェクトでは、次世代の音楽家たちに実践の場と精神的支援を提供。


Polar Music Prizeとは

世界が認める「音楽のノーベル賞」

Polar Music Prizeは、1989年にABBAの元マネージャー、スティッグ・アンダーソンによって設立された、スウェーデン発の国際音楽賞です。
スウェーデン王室の後援のもと、ジャンルを超えて「音楽文化に多大な影響を与えた人物・団体」に贈られます

過去の受賞者には、ポール・マッカートニー、ボブ・ディラン、イェフディ・メニューイン、メタリカ、セシリア・バルトリなど、音楽史に名を刻む人物が多数。
そのためこの賞は、“音楽界のノーベル賞”とも呼ばれるほどの権威を誇ります。


2025年の受賞式と顔ぶれ

Queenやハービー・ハンコックと並ぶ名誉

2025年の授賞式は、5月27日、ストックホルム王宮で開催されました。
スウェーデン王室が臨席する厳粛な場で、受賞者には**100万スウェーデン・クローナ(約1,300万円)**が贈られました。

この年の受賞者は:

  • バーバラ・ハンニガン(クラシック/現代音楽)
  • Queen(ロック)
  • ハービー・ハンコック(ジャズ)

この顔ぶれにより、ハンニガンの芸術的価値がジャンルを超えて等しく評価されました。
特に、ポール・マッカートニーなどと並ぶQueenと同年に受賞したことは、彼女が**“現代クラシックの最前線に立つ象徴的存在”**であることを世界に示した瞬間とも言えます。


主催者からの評価

「音楽的勇気と創造性に満ちた存在」

Polar Music Prize 公式サイトでは、ハンニガンを次のように評価しています:

“類まれな音楽性と創造的勇気を兼ね備えた人物であり、
現代クラシック音楽の解釈において世界最高水準のアーティストである。”

ここでいう「勇気」は、彼女が性別、形式、ジャンル、構造といったすべての“枠”を乗り越えて新たな表現を切り拓いたことを意味します。


ハンニガンの受賞が持つ意味

クラシックに与えたインパクト

バーバラ・ハンニガンの今回の受賞は、単に一人の音楽家に対する栄誉にとどまりません。
それは、クラシック音楽というジャンルが固定化された伝統ではなく、柔軟で革新を受け入れる芸術であることを、世界に向けて再確認させる出来事でした。

彼女が評価されたことは、伝統を守るだけでなく、そこに新しい風を吹き込むことの大切さが、きちんと世界に伝わっている証のように感じました。自分の信じる音楽を届けようとする姿に、多くの人が希望を感じたのではないでしょうか。

まとめ

Queenと並び、クラシックの未来を背負う存在へ

バーバラ・ハンニガンは、歌手でもあり指揮者でもある――でも、それだけでは語りきれません。
そのどちらにも真摯に向き合い、どちらにも妥協せず挑み続けてきた彼女は、これからも音楽界を担う重要な存在です。

2025年のPolar Music Prizeの受賞は、そうした彼女の革新性、芸術性、そして音楽的勇気が、世界に認められたということ。
クラシックの未来は、まだまだ広がっていける。そんな確信を、彼女は私たちに与えてくれます。

参照リンク

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この記事を書いた人

音楽大学大学院でオペラを専攻後、ドイツ・オーストリアに留学。ヨーロッパ各地のオペラハウスの舞台に立つ中で、音楽界の多様性と奥深さ、そしてそのスピード感に魅了される。
帰国後も音楽活動を続けながら、「日本にもっと世界の音楽情報を届けたい」という思いでThe Aria Timesを立ち上げる。
好きなオペラはR.シュトラウスの『ばらの騎士』、最近気になる歌手はSaioa Hernández。美味しいものを食べることと料理を作ることが大好き。子育てに奮闘中。​​​​​​​​​​​​​​​​

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